エンプティー•ノーション

朝起きて、目玉焼きを作ろうと卵を割ったら中身が空だった。
１個くらいはこんなのもあるのかなと、次々割っていくが空っぽのものばかり。せめて白身くらいは入っていてほしかったが１パック全て空っぽとは、おかしな事もあるものだ。なら、牛乳でも飲もうかと、パックを開封すれば中身が空。
なら、せめて煙草でもと掴んでみれば、クシャリと未開封の箱が潰れた。空っぽだったのだ…。
おかしな事が続く。いや、逆に"中身”はあるのが当然という概念こそが、おかしいのかもしれない。
もしかしたら自分の頭の中だって空っぽで、簡単にパカッと割れてしまうのでは…。
そんな事を考えながらアパートの部屋を出たら、躓いて転び階段の角に頭をぶつけた。激痛が襲い、傷口に手を当てる。

良かった！やっぱり中身がある！
痛くて堪らないけど安心した…。ほら、ちゃんと掌に…。

だが、そこに付いていたのは赤い血ではなく黄色いトロリとした……。