積み立て貯時

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私ですか?
見ての通り時計です。
そうです。あなたは今、死にました。
いえ、ですから死神とか天使じゃなくて、時計です。
えぇっと、あなたには二つの選択肢があります。このままあの世に行くか、一週間だけこの世に留まるか。
ええ、もちろん。実は、あなたが知らない間に、私があなたの寿命を貯蓄していたんです。あなたは何かに夢中になっている時に時間が進んでいるように感じたことはありませんか?
その夢中になっている隙をついて、私が時間を切り取っていたんです。その積み立てが利息もついてちょうど一週間。
どうします?
さっさとあの世に行ったほうがいいかもしれませんよ。
そうですか。心残りがありますか。
では、一週間後のこの時間に、ちゃんとここに戻ってきて下さいね。
行ってらっしゃい。

やれやれ。
知らなくていいことを知ってしまっても、何も出来はしないのに。
このまま戻らずに、幽霊にならなきゃいいんだけど。
ファンタジー
公開:20/03/04 07:53

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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