さ苦ら

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世間では、すでに受験が終わり我が世の春を満喫している人もいるが
私はいまだ冬の真っ只中にいる。

共働きの両親にこれ以上負担はかけられず、バイトしながらの受験で国立のみ。
浪人はできないので今回がラストチャンスだ。

「春ちゃん。だいじょうぶかい? あまり無理するな」
「だいじょうぶです。すぐ終わらせますから」

無理をしすぎたか体調が悪い。皿を持っていた手を滑らせて
皿を割ってしまう。まるで漫画か何かのように真っ二つに割れた。

「おや?」
割れたはずのお皿を見てびっくり。なんと小さな桜の木になっていた。

「さ苦らだね」
「なんです。それ?」
どうやら割れた『さ』と『ら』の間に私の『苦』が吸い込まれたらしい。

「今は苦しいかもだけど、このように花が咲くからね。大丈夫」
そういって笑った居酒屋の主人は今までみたどの顔よりもいい顔だった。

その数週間後、私に春がきた。
青春
公開:20/03/05 12:12
更新:20/03/05 12:15

ばめどー

ぼちぼちやっていこうと思います。
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