うれしいひなまつり

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雛祭りの前夜、雛人形の飾られた座敷では…

「ぼんぼり、よし。桃の花、よし。五人囃子、稽古はできておるな?あ、帝も皇后様もそんなにニコニコしてはなりませぬ。すまし顔ですぞ。」

責任者の右大臣が雛祭りの歌の歌詞を片手に総仕上げをしています。

「あー、官女殿、お嫁に行かれた上のお嬢ちゃんはもう少しその…細身でいらしたが…むむ…致し方あるまい。今年は雛あられは我慢なされよ。」

一通りの指示の後、右大臣は各段を見回って満足そうに頷きました。
「よしよし。完璧じゃ。」

席に戻ろうとした右大臣は、はっと気がついて一番下の段に行きました。
「いかんいかん、自分の仕上げを忘れておったわい。」 
そうして供えられていた白酒をひと口。
右大臣の顔はみるみるうちに紅く染まりました。

「まったく、律儀な奴よのう。」

ノンアルコールと書かれた白酒の瓶を眺めながらお内裏様が顔を見合わせてほほと笑いました。
その他
公開:20/03/03 13:34
更新:20/03/05 07:22

文月そよ

のんびりゆるぅり書いてみたいと思います。

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