肌の温度

2
3

 貴方は冷たい方です、と女は言った。
「ほらね。やっぱり冷たい。凍えてしまいそう」
 反対に、背に寄り添う女の肌は、燃えるように熱い。触れ合った部分が、ジリジリと焼けるようだ。
「こうしていても、熱くはなりませんか」
 そんなことをしても無駄だとわかっているのかいないのか、女の手が誘うように上から下へ、男の腕を撫でると、そこに刺されるような痛みが走り、後には小さな水疱が残る。
 焼けている。
 私の背が焼かれている。
 体毛がチリチリと焦げ、ヒリヒリとした痛みが広がる。
 逃げる間もなく、爛れた皮膚は鉄板で焼いた肉と同じに女の肌に張り付いた。
「お願い。行かないで」
 女は男の体にしがみつく。

 男は、その身を焼かれながら、女を罵ることも、許しを乞うこともなかった。もちろん振り返って女を見ることもなかった。

 熱を持たぬまま冷たくなった男の体を、女は恨めしげに抱きしめた。
恋愛
公開:19/12/14 08:37

堀真潮

朗読依頼等は、お手数ですがこちらまでご連絡ください。
Twitter  @hori_mashio
tamanegitarou1539@gmail.com

 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容