光絵(ひかりえ)

20
14

影絵作家のF氏を知っているかい?
F氏の影絵は、光の透過率が違う紙で、影に繊細なグラーデーションをつける。切り貼りを背後からライトで照らした瞬間、光と影の世界が誕生する。
絵の具の絵にはない逆光の美しさ、そして光を消すと絵もまた消える、その儚さが実にいい。
そんなF氏の影絵に魅了された俺が、考え出したのが「光絵」さ。
通常は眩しすぎて見えない光絵だが、暗闇の中だと絵が浮かび上がる。その様子は幻想的で、時にはF氏の影絵の美しさを上回るんだ。
「光陰矢の如し」という諺を聞いたことがあるだろ?
その矢を偶然見つけた俺は、試行錯誤の末、矢を筆代わりにして光のインクで絵を描けることを知った。
ただ、創作中に月日が経つのは早く、光絵を描くときは時間との勝負なんだよ。
季節の移ろいを敏感に捉えて、桜を描くときは冬の間に蕾を描いて春の満開に備え、もみじを描くときは夏の間に青葉を描いて秋の紅葉に備えるんだ。
公開:19/12/14 08:01
影絵 藤城清治 光陰矢の如し インク 季節 紅葉

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容