世界の果てに

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水平線。海面に映るのはゆらゆらとしたオレンジ色。そして空の煌めきを映す無数の輝き。夕方と夜が交じり合うこの瞬間にしか見えない景色だった。
「今年ももうすぐ終わりだよ」
波打ち際に向かって呟く。今この海岸には私一人しかいない。
「君は今なにをしているんだろう」
この世に取り残されたようで海風は一層冷たく体を凍てつかせていく。
「向こうの世界でもよろしくやっていたらいいんだけど」
海の匂いが思い出させるのは暖かな記憶だった。それが恋しくてもう存在しない姿を探してしまう。広い海岸にも海の彼方にもやっぱり誰もいない。だから海に向かって思いっきり叫んでやった。
「やっほー!」
二人で海に来ると無意味に叫んでいた言葉。山と違ってやまびこは起きない。叫び声も自分の分ひとつだけ。それが無性に寂しかった。湧き出る孤独感を吐き出すように大きく息を吐く。
世界の果てに行ってしまった君にこの声は届くだろうか。
その他
公開:19/12/13 22:17

ダヴコ

深く考えずにふわーっとした空気感で書きたいです。ログアウトしてはパスワードを忘れる日々。

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