14
14
父の死因は「エコノミークラス症候群」だったそうだ。
私と夫は3歳になる娘を連れて実家へ戻り、お葬式の準備をする中で、詳しい話を母に聞いた。
父は、ベビーベッドに寝ていて亡くなった。それは父が孫の誕生祝として買ったベビーベッドで、私はそれを断ったのだった。
「すごくがっかりして、怒って。それなら自分で使うって。あの大きな身体を窮屈に縮めて、毎晩毎晩」
「私のせいね……」
涙が溢れた。だが、母はこう続けた。
「違うのよ。本当に気に入っていたみたいなの。無邪気に安心しきった寝顔でね」
私は母の気遣いを有難いと思った。
葬儀を終えて家に戻る日。夫が母に頭を下げていた。
「何?」と聞くと、「ベビーベッドがあるそうだからいただけないかってね」
父が息を引き取ったベビーベッドを、次の子のために使うのは、やはり気が引けた。
私が夫にそう言うと、夫は首を振って言った。
「俺が使うんだよ」
私と夫は3歳になる娘を連れて実家へ戻り、お葬式の準備をする中で、詳しい話を母に聞いた。
父は、ベビーベッドに寝ていて亡くなった。それは父が孫の誕生祝として買ったベビーベッドで、私はそれを断ったのだった。
「すごくがっかりして、怒って。それなら自分で使うって。あの大きな身体を窮屈に縮めて、毎晩毎晩」
「私のせいね……」
涙が溢れた。だが、母はこう続けた。
「違うのよ。本当に気に入っていたみたいなの。無邪気に安心しきった寝顔でね」
私は母の気遣いを有難いと思った。
葬儀を終えて家に戻る日。夫が母に頭を下げていた。
「何?」と聞くと、「ベビーベッドがあるそうだからいただけないかってね」
父が息を引き取ったベビーベッドを、次の子のために使うのは、やはり気が引けた。
私が夫にそう言うと、夫は首を振って言った。
「俺が使うんだよ」
ホラー
公開:19/12/15 11:43
更新:19/12/15 12:08
更新:19/12/15 12:08
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
ログインするとコメントを投稿できます