フシメ

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現代文の由良先生は、「お前の目は節穴か」を省略して「お前は節目か」という。本人的にはイケているつもりかもしれないが、まったくイケていない。
沙羅は、いつも由良先生に「フシメだなあ」と言われ続けてきた。
教科書に答えが書いてあるのに、指されると目が泳ぎ、見つけられない。下を向いて沈黙してしまう。
「沙羅はいつもフシメだなあ。もったいない」
指されなければいいのに。沙羅はいつもそう祈っていた・
卒業が近くなったある日、職員室に呼ばれた。
「分かっているのに、なぜ下を向くのかなあ。もっと自信を持って」
「だって……」と沙羅が言うと、由良先生は続けた。
「少し顎を上げてごらん。ちょっとしたことで、いまよりずっと輝けるから」
由良先生はそういって笑った。
始めて気が付いた。シフメは伏目のことだった。自信を持って前を向きなさい、由良先生はそういっている。
私は先生の優しさに、胸が熱くなった。
青春
公開:19/12/14 19:44

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