小は大を兼ねる

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文具店は重い荷物も多数扱う大変な仕事だ。老骨の身で経営していくには厳しい。
そろそろ店を畳むべきかと思っていた時、働かせてほしいと美大生の彼がやって来た。
それはありがたいが…ウチの給料は安いよ?
彼はそれでもいいと言った。その代わり、文具をいくつか譲ってくれないかと言ってきた。それが給料の足しになるのならいいとも。
彼は働き者だった。儂は彼には才能があると思っている。何度か見せてもらった彼の絵はとても心安らぐ。
しかし彼の絵は評価されなかった。
彼は趣味で切手を集めていた。それも使用済みのものばかり。そのこともあり、彼が欲しいと言ってきた文具の殆どは糊だった。絵具じゃなくていいのかと聞くと、これでいいと答える。
数か月後、儂はその意味を知った。彼は何と使用済みの切手でモザイクアートを完成させていた。
はは…こりゃ参ったよ。

彼は今、切手デザイナーとなり、毎年儂に年賀状を送ってくれる。
公開:19/12/14 18:52

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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