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今の僕があるのは、成人式に貰った一冊の本のおかげだ。
それは豪華な装丁で、新成人全員に贈られた。表紙には節目と書いてあった。最初は人生哲学でも書かれているかと思ったけど、中は真っ白だった。
友人達はパラパラとページをめくって爆笑した。印刷屋のミスだと思ったのだろう。すぐに捨てた人もいたし、落書きやメモにした人もいた。
でも、僕だけはそうしなかった。
この本は節目。だとすれば、僕が成長するきっかけになるはず。
そこで僕はその日の出来事を鮮明に書き記すことにした。
両親の言葉、市長の演説、記念写真、成人した意気込み。数ページ使って書き終えた時、僕は自分の成長を実感した。思わずスーツを破り捨てて、「もっと大きくなってやる」と大声で叫んだ。
それから僕は節目が訪れる度にこの本に記した。
気づいたら僕と肩を並べる人はいなくなっていた。
当然か。
だって、そろそろ身長が東京タワーに届きそうなんだから。
ファンタジー
公開:19/12/14 18:01
更新:19/12/31 08:32

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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