日常のノート(ヤモリ)

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扉と扉の間にヤモリを挟んでしまった。

意図的ではなく、掃除のために開けていた扉を、風が勢いよくさらったのだ。

バンという音をたてて閉まった。

やれやれと開けると、ふるえるヤモリがいた。

死んでたらまた、心持ちが違ったのかもしれない。

足がぺちゃんこになって、つぶらな目が怯えてこちらを見ていた。

パニックになって、一思いに殺した方がこの子のためなのかどうか分からなくて、申し訳なくて、ひたすら心が痛かった。

取り敢えず、扉を開けたまま固定して、様子を見た。ヤモリは動かない。

ごめんねと声をかけ、その場を離れた。

振り返ると、とことこ壁の隙間に走るヤモリの影が見えた。

念のため、側に行くと、やっぱりヤモリはいなかった。
公開:19/12/14 13:13
更新:19/12/14 13:58

綿津実

自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。

110.泡顔

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