枝に結ぶ

4
6

待ち人来たらず。

吉のくせにそこはダメなのかよと心の中で。
そうか。
私はまた一人で生きるのか。

どうしてか私には前世の記憶がある。
今世は私にとって6度目の人生だ。
そしてどの世の私も一生に一度と思い詰めてここにみくじを引きに来る。

「私は大吉が出るまで引くけどね。」

そう自分に言い聞かせるよう独りごちて折りたたむ。
細く綺麗に結びやすいように。
それが花であるならばさぞやたくさんの種を孕むだろう。
けれど実際には枝という枝に無理な力を掛けられて疲弊していく。

きっともう今の私はここには来ない。
次の私が来た時に結ぶ枝はまだ残っているだろうか。
随分と年を取ったこの神社も神木も。
そっと触れる。
枝を幹を。
それから今世の私のみくじを結ぶ。
ぎゅっと。
強く。

「・・じゃぁまたね?」

一世に一度、あなたの命を削る儀式に加担する。
早く生まれ変わって。
待ち人よ来たれ。
ファンタジー
公開:19/12/12 22:12

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容