終わりの準備と始まり

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 荷物を詰めながら、一本なくなったスペアキーのことを思い出した。やっぱり全部揃えて返さなきゃかな?
この部屋に入居する時、鍵は入居ごとに全て付け替えていて安心です!と饒舌に言った不動産屋の顔が頭によぎった。
返さなくてもいいんじゃないか。
いやだめか。なくなったスペアキーの在処はわかっている。先輩に渡したのだ。憧れだった先輩。一年の文化祭準備期間中、みんなでうちに雑魚寝をした。朝授業のない先輩を起こしたくなくて、スペアキーを置いて出たんだ。家に帰るとキーはなくなっていたから先輩が持っているはず。先輩がいつでもうちに入ってこれるんだなあ。と思うとなんだかドキドキして自分の気持ち悪さにびっくりした。まあ、実際は先輩も鍵を返し忘れてそのまま鍵の存在も忘れてしまったんだろうけど。
 最後の箱にガムテープをとめた時玄関のチャイムがなった。
「鍵!間に合った?」
青春
公開:19/12/12 21:23

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