ビー玉

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ビー玉を床に転がす。
ころころとビー玉は転がっていく。
ほんの少しの傾きでもあれば、アパートの床のより低いほうへと身を移動させようとする。
ビー玉はそのことを面倒くさがったりしない。
与えられた環境に、そのままわが身を反応させていく。
抱え込んだ膝の上にひょいとアゴをのせ、有希は思い巡らす。
もう一人の私は、リクルートスーツを着て、満員電車に乗っている。
ガタゴトと揺られながら、最後の最後まで、志望理由を頭の中で反芻させている。
愛想のいい笑顔の作り方をイメージしている。

時計の針を見たら、もう就職面接の時間が始まっていた。
本当の私はまだここにいる——。
私、やっぱりまともに会社で働けない人間なんだ。
その時、有希は初めて自分を受け入れ、その身の自由と、空寂さを味わった。
そして、Gペンを持ち、原稿にマンガを描きはじめた。
青春
公開:19/12/12 20:33
就職活動 自由 ビー玉

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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