節目玉

0
3

 節目と辞書で引くと、竹やらの節があるところ、転じて物事の区切りとなる大事なところ、と出た。
 当然節には目なんてついていない。竹林に立ち入るや否やそこかしこの目玉から睨まれれば、一目散に逃げ出すことだろう。
 だからこれは、想像だ。
 節目はぎょろりと僕を睨んだ。クローゼットの肥やしになりかけていた一張羅すら射抜くように。
 普段なら視界に入ろうが気にも留めない、タワービルの高層階で。毎日毎日食券機と顔を突き合わせる男には不釣り合いな、予約必須のディナーの席で。
「僕と結婚してください」
 差し出した指輪をきょとんと見つめる彼女と、降って湧いたイベントを興味深げに見守る群衆の目。
 固唾を呑んだ店内の時間を取り戻したのは、指輪に伸びた彼女の手だった。
 食器の擦れ合う微かな音と談笑がかえってくる。節目達は柔和に目元を緩ませ、僕らの門出を祝福している。そんな気がした。
恋愛
公開:19/12/12 19:04
更新:19/12/12 19:08
節目

ぴろしき

Twitter
 @yosisige

上記アカウントにて駄文を垂れ流しているインターネットポエム揚げパン。
にほんご、すき。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容