ものさし

私は小さい頃からものさしで測るのが大好きでね。色々なものを測ってきた。
私の指。母の髪の毛。父のくしゃみで飛んだ唾の距離。猫の尻尾。
ありとあらゆるものを愛用のものさしでずっと測ってきた。
そのものさしに付喪神が宿った。愛情注いで大切にしてきた道具には魂が宿るのだ。
私はより一層、あらゆるものを測るようになった。
ものさしには不思議な力がある。私の胸にものさしを当てるとドキドキという目盛がぐんぐん伸びていった。
私はこの人が好きなんだ…ものさしに教えられ、私達はその距離を詰めていった。ドキドキの目盛はついに天井まで届き、節目を示した。
それを機に私達は結婚した。

私は夫の遺影に手を合わせ、そんな事を思い出していた。
さて、もうすぐ孫達が遊びに来る。準備しなくちゃ。
前に遊びに来た時、孫にものさしを使うと喜びの目盛があまり伸びなかった。
今回はもう少しお小遣いをあげて喜んでもらわなくちゃ…