自画像

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 絵を描くのが好きだった。
 中学入学と同時に美術部に入った。
 初めて自画像というものを描いた。鏡を見ながら、自分の顔を。
「全くあなたに似ていない」
「何もかもひどい」
 評価は散々だった。

 その後、美術の道に進んだが、やっぱり自画像が描けない。
「これは君じゃないね」
「なぜこんな絵を描く」
 技術不足か、内面の掘り下げが足りないのか、何度描いても見た人は顔をしかめるばかりだ。

 ある日、同じ教室に通う一人の女性が「ちょっといい?」と言って、私の背中を強く叩いて、持っていた塩を掛けた。さらに、千切ったお札を清水で飲まされた。
 何をするんだと思ったが、鏡を見て驚いた。どこにでもいる若者の顔が映っている。
「それが、あなたの本当の顔よ」
 では、今まで見ていた醜く歪み崩れた顔は、いったい何だったのだろう。


 背中を叩いた女性は、悪霊祓を得意とする巫女の家系なのだそうだ。
ホラー
公開:19/12/12 15:51

堀真潮

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