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何もない世界の中で、ただ、白い階段が天に伸びていた。一段上ると、若い頃の両親の笑顔と丸いケーキが鮮明に脳裏に甦った。
誕生日、七五三、入園式。
階段を上る毎に忘れていた記憶が押し寄せてきた。
卒園式、入学式。
そうか、これは人生の節目の階段なのか。
卒業式、初恋、失恋。
私の青春を彩る親友や恋人、仲間達。
しかし、大学の卒業式と入社式を越えると、平坦な道が地平線に伸びていた。この頃から私は新年も誕生日も祝わず節目のない日々を送っていたのか。
ひたすら歩くと、ようやく次の段が見えた。
見合い、結婚。
子宝には恵まれなかった。
新年、誕生日、結婚記念日、いい夫婦の日。
記念日好きな妻のおかげで、その後の私の人生は節目で溢れていた。
銀婚式、還暦、古希、喜寿。
最後の階段を上りきって、大扉に手をかける。
妻よ。両親よ。友人よ。
私に関わってくれた全ての人達よ。
幸せな人生だった。

ありがとう。
ファンタジー
公開:19/12/11 18:04
更新:19/12/31 08:26

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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