レトロ先生

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担任の先生は、レトロなものが好きだった。俺にはレトロな魅力なんてわからなかったけれど、一人やけに先生に懐いている女子がいた。
俺はその女子のことが気になっていたので、興味もないのに「レトロっていいよな」なんて言ってみせる。三人で、放課後はレトロな話で盛り上がったりもした。
「中畑くんは分かり合えて羨ましいな。私、本当はレトロなんて興味ないんだ」
二人で帰っていたある日、そう言われた。言葉の意味がわからずに理由を聞いてみる。
「私が興味あるのは、レトロ先生だから」
風が吹く。黒髪の三つ編みと、膝より下の長いスカートが揺れた。
「内緒にしてね」
香水ではなく線香の匂い。スカートは長くて三つ編みは野暮ったい。携帯の一つも持っていない。昭和みたいだと、誰かが陰口を言っていたことを思い出す。

そうか、俺は本当に、レトロ先生と気が合うのかもしれない。
ほろ苦い感情を押し殺して、「もちろん」と答えた。
青春
公開:19/12/10 23:08

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