無理なんだい

「無理なんだいそんなことは！」

何かを頼めば必ずそう返してくる幼なじみ。もう少し努力しようという気はないのかと言ってやっても、頑として首を縦には振らない。

「無理なものは無理なんだい！」

がさつでお馬鹿で子供っぽい。小学生の頃から何一つ変わらない男の子だった。

「で、私と付き合ってほしいわけなんだけど」

なんなら結婚でもいいわよ、と付け足してやる。必死に平静を装いはしたけれど、声は震えていたかもしれない。
お馬鹿なあいつは驚きで声も出ないらしい。顔を真っ赤にして、目を大きく大きく見開いている。

「ま、あんたには無理難題かしら」

ああ終わっちゃったな。何がって私たちの関係ね。
気を抜くと泣いてしまいそうになるので、さっさとこの場を立ち去ろうと背を向ける。

ぱしりと、腕を掴まれた。

「無理じゃない」