優しい反抗期

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「ママ、僕、反抗期になる」
「何よ突然?」
「反抗期がない男はダメな大人になるって聞いたんだ。でも反抗期のフリだから心配しないで。毎日だとママが辛いだろうから、たまに反抗期になる。目印はこれ」
義男がつけヒゲを装着した。
「ヒゲがある時は反抗期だから」
そう宣言して、義男の反抗期が始まった。
三日に一度くらいで、ヒゲをつけた義男は反抗期になった。私は翌日には優しい義男に戻ることを知っていたから、何を言われても笑顔で応じた。
しかし、ある日を境に義男が毎日反抗期になった。酷い台詞に心を痛める日々が続いた。義男は本当に反抗期になったのかしら。
「うるせぇ、クソババァ!」
ついに私は義男の前で号泣した。すると、義男が私を抱きしめた。ヒゲはつけていなかった。
「ごめん、ママ。ママを悲しませてこそ一人前の反抗期だと思ったんだ」
優しい義男が戻ってきた。
それが嬉しくて私はいつまでも泣くフリを続けた。
青春
公開:19/12/12 14:10
スクー 付けっぱなしの反抗期

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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