オーロラ介護サービスツアー

「嘘じゃ。儂を騙しているな」
　梅吉は、息子と介護職員に怒鳴った。
「父さん、北欧に行けば、会長に戻れます」
　息子が言うには、オーロラからのエネルギーを直接浴びると、足腰は丈夫に、老化も良くなるらしい。
　息子が社長をしている会社は、先代の梅吉のカリスマ性で融資が受けられていた。
「ベッドからも動けんのに、行けるか！」
「我々スタッフが四人で運びます。お孫さんも心配してますよ」
　介護職員の言葉に入り口を見ると、孫の凛(りん)が駆け寄ってきた。
「お爺ちゃん、遠く行っちゃやだ」
　彼女は、ぽろぽろ泣き出し、息子と職員は慌てた。
「ほらみろ、儂は行かん！」梅吉の剣幕に、二人は説得を諦めた。
　二週間後、ツアーに行った老人たちが戻った。噂通りシャキっと歩けるようになった者もいたが、低体温症で倒れた人もいた。
　梅吉は、ベッドの上に座り、凛が録画したオーロラの映像を見ながら、リハビリを始めた。