陰陽師(後編)
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不意に、背中にぬらりと怖気が走った。
たゆたうように木床が歪んだかと思うと、眼のない眼窩を、がま口のように開いた怨霊が頭を覗かせ、巣穴から追い出されるように私の目の前に飛び出してきた。
思わず、眼を閉じる。金縛りにあったように動けなかった。
瞼を開けば、首筋に怨霊の顔があった。ダンベルのような重さで私の首を圧迫する。私の頸動脈はそれに抗いドクドクと頭部に血液を送ろうと蠕動した。
このままでは怨霊に扼殺されるぞ……!
私は目で助けを求めた。
すると、陰陽師はひょいっと砂糖菓子を私の口に放り込んだ。
バチッと音がして、怨霊の鋭い爪が弾け飛んだ。そのまま白砂糖のように怨霊の体は脆く崩れていく。恐ろしい怨嗟の絶叫を聞いた気がした。
私は瞬きをした。
目前では、古池の鏡面に蒼月の影が揺れていた。
「終わった、のか?」
陰陽師は相も変わらず冷然と微笑んでいた。
たゆたうように木床が歪んだかと思うと、眼のない眼窩を、がま口のように開いた怨霊が頭を覗かせ、巣穴から追い出されるように私の目の前に飛び出してきた。
思わず、眼を閉じる。金縛りにあったように動けなかった。
瞼を開けば、首筋に怨霊の顔があった。ダンベルのような重さで私の首を圧迫する。私の頸動脈はそれに抗いドクドクと頭部に血液を送ろうと蠕動した。
このままでは怨霊に扼殺されるぞ……!
私は目で助けを求めた。
すると、陰陽師はひょいっと砂糖菓子を私の口に放り込んだ。
バチッと音がして、怨霊の鋭い爪が弾け飛んだ。そのまま白砂糖のように怨霊の体は脆く崩れていく。恐ろしい怨嗟の絶叫を聞いた気がした。
私は瞬きをした。
目前では、古池の鏡面に蒼月の影が揺れていた。
「終わった、のか?」
陰陽師は相も変わらず冷然と微笑んでいた。
ファンタジー
公開:19/12/09 20:07
陰陽師
最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。
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