陰陽師(前編)
0
4
ジッポライターをカチャリと開く音が、仏堂にこだました。オイルの甘い香りが鼻孔を刺激する。
「どうやら、ここにいるようですね」
陰陽師が火明かりを閉じ、硬質な音が堂内に響いた。
と同時に、誰の姿もないのに、障子戸がひとりでに横へずれた。戸は音を立てずに移動し、ぬっと粘質の空気に阻まれたかのようにぴったりと締まり切る。精緻なり。
「心配には及びませんよ。今のは、私の式神です」
こちらの不安を見越したように、陰陽師は薄く微笑んだ。
「本当に、大丈夫なのか?」
「さて……今宵は月が美しいですね」
彼は事も無げに人差し指を、血管の浮き出た私の手首に当てる。
ピキッと電撃の一閃が放たれたように感じた。
お堂に風を起こすものは無かったが、緩やかに空気が動き出し、私の周囲にとぐろを巻き始めた。無色透明の大蛇が顕現したかのような錯覚が、視覚を超えた直感として私の全身表皮を圧迫してくる。
「どうやら、ここにいるようですね」
陰陽師が火明かりを閉じ、硬質な音が堂内に響いた。
と同時に、誰の姿もないのに、障子戸がひとりでに横へずれた。戸は音を立てずに移動し、ぬっと粘質の空気に阻まれたかのようにぴったりと締まり切る。精緻なり。
「心配には及びませんよ。今のは、私の式神です」
こちらの不安を見越したように、陰陽師は薄く微笑んだ。
「本当に、大丈夫なのか?」
「さて……今宵は月が美しいですね」
彼は事も無げに人差し指を、血管の浮き出た私の手首に当てる。
ピキッと電撃の一閃が放たれたように感じた。
お堂に風を起こすものは無かったが、緩やかに空気が動き出し、私の周囲にとぐろを巻き始めた。無色透明の大蛇が顕現したかのような錯覚が、視覚を超えた直感として私の全身表皮を圧迫してくる。
ファンタジー
公開:19/12/09 20:02
陰陽師
最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。
コメントはありません
ログインするとコメントを投稿できます