261. けむり

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私より8歳も若かった妻がガンで急逝した。病巣が見つかったときには既に手遅れで、三ヶ月ほどで旅立ってしまった。
葬儀の日、荼毘に付すとき私は食事も酒も喉を通らず外に出て1人、ゆっくりと天へ昇っていく妻の煙をただぼんやりと眺めていた。
そんなときにふと、みゃあという声が耳に入ってきた。気が付くと足元に濃いグレーの毛の子猫がいて、私の靴紐にじゃれかかっている。
その姿があまりにも健気で、尽くしてくれていた妻にどことなく似ている気がしたので「一緒に来るかい?」と声をかけ、抱き上げて共に帰宅した。
その日の夜のことだった。夢枕に妻が立ち「あなたのお蔭でいま私はここにいます」と礼をした。
私は目を覚まし、周りを見渡したが当然妻の姿はない。
代わりに子猫が私の胸の上に座り、冷たい目でこちらを見下ろし、黒い息を吹き掛けていた。

(あなたのタバコの副流煙のせいで私は死んだのよ。あなたも早くここに来なさい)
その他
公開:19/12/09 16:36
更新:19/12/10 01:08

ことのは もも。( 日本 関西 )

日本語が好き♡
18歳の頃から時々文章を書いています。
短い物語が好きです。
どれかひとつでも誰かの心に届きます様に☆
感想はいつでもお待ちしています!
宜しくお願い致します。

こちらでは2018年5月から書き始めて、2020年11月の時点で300作になりました。
これからもゆっくりですが、コツコツと書いていこうと思います(*^^*)

2019年 プチコン新生活優秀賞受賞
2020年 DJ MARUKOME読めるカレー大賞特別賞受賞
2021年 ベルモニー縁コンテスト 入選

カントー地方在住
 

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