沈黙の決闘

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 両者が試合開始の宣言をすると、そこからは無言の戦いが始まる。気を抜くことはすなわち敗北であり、互いに必殺の構えで相手の一挙手一投足に注意を払う。
 この決闘で声を上げてはならないというルールは明確には存在していない。だがそれを使って有利に立とうとはお互い微塵にも思っていないのだ。まさに暗黙の了解である。

 己のプライドすらも武器にするこの戦いは実力の拮抗からか一瞬で勝敗が決まるはずもなく、膠着状態に陥っていた。お互いに眉を吊り上げ、口を歪ませ苦しそうな中、体格で勝るチャンピオンがついに白目を剥いた。

 決着の時間が訪れた。

 挑戦者の笑い声が部屋の中に響き渡る。その笑い声に釣られて、もう片方も大笑いを始めた。
 にらめっこ勝負は今日もお兄ちゃんの勝ちだ。
その他
公開:19/12/09 14:38
更新:19/12/19 19:05

はつみ

現実世界の2次創作
誰かに教えたくなるような物語を書きたいです

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