大事な人

空から花が降ってくる。
ミイちゃんの母親、ユキコが息を切らせてうちへ来た。
お風呂上がりのほかほかの娘を抱きしめると娘にコートを着せ、その上から自分のダウンコートを被せて、自転車に乗せて帰って行った。
私は、本当はもう少しふたりにゆっくりしてもらって、ふたりと話したいと思っていた。一緒に暮らせる親子を羨ましいなぁと思いながら見送った。
居間で、狐のメイコが手元から花を次々出しながら生け花をしている。
「ねぇ、今日のミイちゃんの行動はさ、ちょっとした家出かなぁ。家出して、お母さんが大慌てで迎えに来てくれるっていいよねぇ」
メイコはギロリと私を睨む。
「メイコだって、大事な人の大事な友だちの大事な娘だから、うちまで案内したんじゃない！」
メイコ、ごめん。
テーブルを彩る小さな生け花の世界。こんなに狐のメイコに愛されている。