一輪でいい

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空から花が降ってくる。
狐のメイコが降らせたサザンカを追いかけて、友達の娘が私の家にたどり着いた。ミイちゃんはランドセルを下ろし、コートを脱いで、手を洗うと、私について台所に来た。その一連の流れを見て、よく躾が行き届いてるなと感心した反面、正直に言うと気の毒にも思えた。
私はミイちゃんと自分にハーブティーを淹れ、メイコにはコーヒーを淹れた。
お茶を飲んだ後もまだ体の冷えがぬけない感じだったから、ミイちゃんをお風呂に入れた。
その間に、ミイちゃんの母親に電話をかける。
電話の向こうで、ミイちゃんの母、我が同級生のユキコは声を震わせたり荒げたりホッとしたりとにかく忙しかった。最後は「今すぐ迎えにいくから!」と電話を切った。
メイコは、静かにコーヒーを飲んでいる。花を降らせて、ミイちゃんをうちまで案内してくれてありがとう。
メイコは「どーいたしまして」と言って、サザンカの花を一輪、私に渡した。
ファンタジー
公開:19/12/09 11:50
更新:19/12/09 16:43

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