花の思い出

2
5

空から花が降ってくる。
その日は大学で同じゼミだった友達の結婚式で、新郎新婦がチャペルから出て来たところに参列者が花びらを撒いた。
呼んでくれなくて良かったんだけどな、とうんざりしながら式が終わるとお手洗いで化粧直しをした。
違うか、私が来なければ良かったんだ。そう考え直すと気が楽になって、披露宴は体調が悪くなったと受付を任された友人に告げて、引き出物を置いて帰った。ご祝儀は、預けたのかな。どうしたんだっけ。
ハイヒールをぺたんこ靴に履き替えて、港が見える丘を歩いた。
寒くて薄暗い冬の日だったから、雪が降って来たのかと思ったら、風にちらついていたのは、リンゴの花だった。
あの時、展望台で一緒にリンゴの花が舞うのを見た男の子の結婚式。
「冷えるから、早く帰ろう」
私はリンゴの花を降らせたメイコの袖をつかんで、そのまま引きずられてうちまで帰った。
恋愛
公開:19/12/09 09:46
更新:19/12/09 16:41

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容