ワカメの味噌汁

人生には分岐点がある。その時、何を選んだかによって先が変わってくる。

大学に入ったことをきっかけに一人暮らしを始めて、自分で自分の食事を用意せねばならなくなった。いわゆる自炊である。

最初のうちは失敗の連続だった。

初心者にありがちなことで、レシピを見ないし、何をした結果どうなるかの想像力が働かない。そのくせ、出来合いのものに頼らずに何かをしようとするからとんでもないことになる。

味噌汁を作ろうとしたことがあった。乾燥ワカメをどれだけ入れればいいか何も考えず、説明を読まず鍋に適当に水をはり、具は多ければいいだろうと豪快にワカメを入れる。その結果、ワカメの味噌“汁”のはずがワカメの味噌“煮”になってしまった。汁などどこにもない。まさかあんなに増えるとは！

そんな失敗をしていた私も、今やミシュランの二つ星をもらう和食屋の亭主だ。人生何があるかわからない。あれは節目だったのだろう。