そこで去らば

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二人は裸足で道を歩いている。
「あなた、さっきからここの景色は私たちの思い出の場面を見せてくれてるんだね」
「そうだな、ホントに死んでしまったのか」
美咲が言うには二人は死んでいる。
「見て、二人で見に行った映画よ、あ、あの遊園地楽しかったわね」
美咲はあのとき以来見せなかったとびきりの笑顔をしている。景色は新人歓迎会に移った。「あ、由美さんだ。もうあの人に会えないわね、あなた。あの人にはあなたを渡さない」
美咲は宏が由美と仲良くなり出してから変わった。次の景色は今晩の台所。美咲が二人のコーヒーに怪しげな液体を入れている。
「お前まさか」
「あなたと一緒にいたかったの。これからはずっと一緒」
その時道が二つに別れた。天から声がする。
「人殺しは地獄へ行ってもらう。お前たちは一緒にはなれない」
「嫌よ、あなた」
虚しく声が空に響く。
「由美も殺してくれてたらよかったのに…」
宏は歩き始めた。
その他
公開:19/12/09 23:43
更新:19/12/10 00:05

いーぽん

空想ばかりしてる19才です
普段はもう少し長めのショートショートをインスタグラムで投稿してます。

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