影とり

うちの学校では昔の遊びが流行ってる。けん玉や竹馬、メンコが人気だけど、オレは男子に不人気なあや取りを選んだ。理由は隣の席の彩ちゃんと遊ぶため。失敗せず６つ取れたら、告白するって決めた。
帰り道、２人で練習しながら、川沿いの土手を歩く。吊り橋、田んぼ、川、船。２つ目の田んぼを取りそこねた。
「あ～、また啓人君」
「ごめん彩ちゃん、もう１回」
だって。指とか手とか顔とか近いし。おまけに次は運命の６つ目。ここで『将来結婚して』って、ダイヤを差し出す。緊張するなって方が無理だ。
しぶしぶな彩ちゃんの吊り橋から、田んぼ、川、船、田んぼ、よしラスト！
「……あっ」
失敗したダイヤが、風に乗って落ちてった。必死に下を覗き込む。赤い毛糸は見えない。
「啓人君、見て」
川に掛かる鉄橋の影。真ん中に特大の黒いダイヤ。
「あ、彩ちゃん！オレ……」
「カルガモ！可愛い～♡」

どうやら、道のりはまだまだ遠そうだ。