振り返れば

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「次は節目〜。降りる方いなければ通過しま〜す」

祖母の家に向かう路線バスだった。車内は私だけなのに、マイク越しなのが変な感じ。それにしても、なんて地名なの。入学や卒業、成人式、就職…。節目は数年ごとに訪れたけど、40歳を目前に控えて、その次はなかなか来ない。

「あ、わたし降ります!」

節目には見渡す限り田んぼが広がっていた。馬鹿げた思いつきに付き合ってくれるほど、現実はロマンチックじゃない、か。歩き回る気も失せて時刻表を覗き込むと、次のバスは案外すぐやってきた。

動き出したバスには、また私ひとり。到着が遅れると祖母に電話すると、「そんなバス停、知らんけどなあ。ま、節目っちゃあ、過ぎ去らんと分からんけんね」と笑ってくれたから、私も笑った。

「車内で携帯電話はお控えください」

運転手がわざわざ振り向いて言ってきた。まさかね。この先何度も何度も思い返すことになるのが、この瞬間とは…。
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公開:19/12/07 23:24

糸太

400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。

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