月並みですが

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「月並みだけど、お父さん今日までありがとう」

 生まれたのはつい先週のように感じていたが、気がつけばすっかり美しい大人の女性になっていた娘。

「彼、お父さんみたいな人なんだよ」
「うるさい。定番の台詞じゃないか」
 
 妻は照れる私を見て笑っていた。そして娘の成長を刻んでいた大黒柱へ誘った。

「今日が最後か。体には気をつけろよ」

 私はこれ以上の言葉が出てこなかった。ちょっと背伸びをする娘の頭を軽く押さえ、柱の位置を確認した。油性ペンで柱に印を書こうとすると、ちょうど木の節目が邪魔をしてくる。

 そうだな、確かに今日は私達家族の節目だ。我慢していた涙が一気に溢れた。

 「お父さん、まだ?」
 
 私は慌てて涙を拭き、【瑠奈 七日目】と記した。

 妻の田舎へ里帰りしたら、兎達に聞いてみよう。妻の種族は竹みたいに成長が早いなんて、誰も教えてくれなかったじゃないか。
その他
公開:19/12/09 07:35
節目

たらはかに( 日本 )

たらはかに

https://twitter.com/tarahakani
猫ショートショート入選 「猫いちご ・練乳味」
渋谷ショートショート入選 「スク・ラブラブ・ランブル交差点(哀)」とか。

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