ある作家の死

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僕は彼の絵を観たことがある。森の木々を描いたものだったが、ビッシリと緑で細かい木の一本一本を描き込んだ描写に、なぜか偏執狂的な狂気を感じたものだった。

細かいところへのこだわりや絵画的な文章世界。

生来病弱なためか、彼の作品には死の陰がつきまとう。

37歳で発表した作品の猫は溺死する。

40歳で出た小説の美人にも死の臭いがした。

41歳の夏に出した短編集は死が満載だった。

47歳で新聞に連載した小説は自殺を扱ったものだった。

生涯の大半を闘病してきた彼は、103年前の今日死んだ。

絵画とともに観た彼のデスマスクは無表情だったのを覚えている。

その完璧主義と偏執的なこだわりが、彼の命を削ったのではないかと思いたくもなる。猫の飼い主だった先生のように気楽な生活を送っていたら、その後は変わったかもしれないが、最後の作品を完成させたかったであろう。叶わなかったのが残念だ。
その他
公開:19/12/09 07:00
更新:19/12/08 22:53
210 吾輩は猫である 虞美人草 夢十夜 こころ 夏目漱石の命日

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