愛の証

空から花が降ってくる。桜吹雪の話しをしているんじゃなくて、コスモスや沈丁花や牡丹に桔梗、ひまわりの花まで丸ごと降ってくる。
色とりどりではあるけど、季節も咲く場所もバラバラでめちゃくちゃだ。ハイビスカスとエーデルワイスも一緒に風に流れてきた。
花の流れに逆らって、上流を目指す。
急がないと花につぶされて溺れてしまう。
さっきまで膝下を埋めていた花の流れは、今は胸の高さまで上がってきている。手で花をかき分けて、足を一歩ずつ進める。香りで胸が詰まる。
どうにか丘を登って、頂上の木までたどり着き、その枝によじ登り、花の流れを下に見た。靴に、服に、花びらが絡みついている。
「はい、どうぞ」
隣の枝から、雪柳の渡された。メイコが目を細めて笑う。
私を愛しているから、天から花が溢れ出てしまったと。
街は今や花にうもれて、人の声もしない。呆然とその景色を眺めているとメイコが顔を近づけてキスをした。