良い空気の入った缶詰

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コンビニで良い空気の入った缶詰を購入し、家へと急ぐ。
会議がこんなにも長引くとは思わなかった。今日は結婚記念日だってのに妻に一言も断りなく遅くなってしまった。きっと妻は怒っているだろう…
玄関を開けると妻が仁王立ちで待っていた。その顔は憤怒に染まり、とても言い訳が通用するような雰囲気ではない。
僕は急いで缶詰を開け、土下座をした。
「ごめん!結婚記念日なのに遅くなって本当にごめん!」
何も言わない。まだ空気が悪い。2つ目の缶詰を開けた。
「ずっと待ってたのに…」
妻が涙声で呟いた。僕は起き上がると同時に3つ目の缶詰を開け、ポケットの中の旅行券を差し出した。
「今週末、結婚記念の旅行に行こう」
空気が良くなり、妻は頷いてくれた。
冷めた料理を温め直し、二人で食べた。
せめてものお詫びにと僕が食器を洗っていると蓋の開いた甘い空気の入った缶詰を見つけた。
妻は今夜、甘い雰囲気をお望みのようだ。
公開:19/12/08 18:59

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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