帳の向こう

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虫も鳥も獣も人も、あらゆる生き物たちが寝静まったのを確かめて、月は幕を降ろした。
重く光を全て遮るカーテンの向こうで深く息をついて、少し灯りを落とす。自分の明るさで目が疲れてしまったのだ。
あたたかなお茶をいれて、波の音を聴きながら呼吸をととのえる。
明日からはまた少し、灯りを落として夜に出るのだ。そうしてだんだんと灯りを鎮めながらしばらくしていれば、明るい昼間に出番が来て、雲も風もさり気なく月のそばを通りすぎる。

鏡を取り出し、少し下がったまつ毛に息を吹きかけて上向きに化粧をなおす。
眼元に力を込めると、さっと幕を開けて、ふたたび夜の舞台へ。
さぁ、夜道を照らしてやるよ。
ファンタジー
公開:19/12/08 16:53
更新:19/12/08 19:39

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