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初雪のひとひらに乗って、こきさんが降ってくる。
何十年かに一度。村外れの鎮守の森の、すっくと高いヌシの木に降ってくる。地衣類の一種だろうと学者は言い、神の衣だと年寄り達は言う。コケが訛ったものかも知れないし、古い木かも知れないし、七十の祝いの古希かも知れない。こきさんの雪が触れたところから、化粧を刷いた様に、衣装を着せた様に、真白い斑が広がって、晦日の頃には、幹も節も、枝の末々までも覆われる。
まるで、木の形にこしらえた雪が立っている様。溜息のこぼれそうに美しくて、涙のこぼれそうに淋しい。
こきさんが降ったら、ヌシの木は代替わり。冬中続いた雪の消える頃、ふと気付くとどこにもない。輪になった注連縄だけが落ちている。
雪に成って、解けて流れて空へ昇る。天女の羽衣かも知れんねぇと呟く母は、次のヌシの木の為に、炉ばたで新しい縄を綯っている。結い上げた九十九髪にうっすらと、名残り雪が光っている。
何十年かに一度。村外れの鎮守の森の、すっくと高いヌシの木に降ってくる。地衣類の一種だろうと学者は言い、神の衣だと年寄り達は言う。コケが訛ったものかも知れないし、古い木かも知れないし、七十の祝いの古希かも知れない。こきさんの雪が触れたところから、化粧を刷いた様に、衣装を着せた様に、真白い斑が広がって、晦日の頃には、幹も節も、枝の末々までも覆われる。
まるで、木の形にこしらえた雪が立っている様。溜息のこぼれそうに美しくて、涙のこぼれそうに淋しい。
こきさんが降ったら、ヌシの木は代替わり。冬中続いた雪の消える頃、ふと気付くとどこにもない。輪になった注連縄だけが落ちている。
雪に成って、解けて流れて空へ昇る。天女の羽衣かも知れんねぇと呟く母は、次のヌシの木の為に、炉ばたで新しい縄を綯っている。結い上げた九十九髪にうっすらと、名残り雪が光っている。
ファンタジー
公開:19/12/06 20:43
節目
木の世代交代
地衣類(ちいるい):
菌類と藻類の共生体。
岩や木の表面、地上に生える。
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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