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倫理が失われると、悲劇が起きる。
D67は、ヒト遺伝子を持つが、産みの母親を持たなかった。
彼が法律上「人工物」として扱われたのは、ヒトクローン工場の「人工子宮」で「製造」されたからだった。

悲劇はある朝、何の前触れもなく訪れた。
「大統領、私が分かりますか?」
D67が目を覚ますと、国家安全保障問題担当大統領補佐官クリス・バーグランドが、聞き慣れない呼称で彼の手を取り質問した。その瞳には親しみと尊敬、そしてある特別な使命が宿っていた。
クリスは今から27時間前に合衆国大統領が滞在先のホテルで銃弾を頭部に撃ち込まれ、危篤に陥ったことを手短かに彼に説明した。
この危機に対処するために、大統領は敵国への報復を毅然とした態度で実行しなければならないとクリスは言った。
意思を持たないD67は、クリスの命じる通り全てを実行した。
それは簡単なことから始まった。
まず、核のボタンを押したのだ。
SF
公開:19/12/06 19:36
更新:19/12/06 19:39
ヒトクローン クローン 大統領

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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