アドリブばーさん

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決められたマニュアルをこなす毎日。こんな毎日に嫌気すら湧かない。が、ある日僕の前に見ず知らずのアドリブばーさんが現れた。
「あんたぁ、こんなことしとったらいかんよ」
声を掛けられ、立ち止まる僕の手を取り小さな飴玉を握らせた。
このアドリブばーさん、見ず知らずの人だ。ただ仕事帰りに、声をかけてきただけのばーさん。
僕、飴玉をもらっても、ここからどうすればいいかわからなかった。
「あの」「なあに~」「これ」「あげるわぁ」
どこにも、マニュアルがない。答えが見つからない。
僕は、立ち止まっていた。が、僕を見てアドリブばーさんは笑っていった。
「そうやって、立ち止まるのも悪いことじゃないんだよぉ」
その声が、何となくマニュアルに聞きとれた。

僕は、踏切の前で立ち止まっていた。
少しだけ考えて、電車が過ぎるのを待ってから踏切を渡った。
マニュアルばーさんは、いつの間にか姿が見えなくなっていた。
青春
公開:19/12/09 12:00
マニュアルばーさん

誉野史( 愛知 )

はじめまして!
お立ち寄り頂きありがとうございます。
誉野史と申します。

現実世界ではよく知らない人に声をかけられやすいタイプで通っています。
なので、気軽に声をかけてください。

ジャンルは様々。
思いつくままに。

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