ひつじの田んぼ

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雪を冠に頂く連峰から、紅葉と針葉樹の森を経て、平野へ至る一枚画を写真に収める。
頃は師走の初旬、陽は照りつつ空気は冷たい。刈り入れの済んだ乾田に、ひつじが柔らかく萌えている。
稲の孫と書いて、ひつじ。稲刈り後、株に再生した稲を指す。南方では、かつて二期作も行ったと聞くが、こちらでは穂の出るまで育つ事はなく、丈の低い若草色は、霜に当たれば白茶に枯れ、春まで雪に潰される。
家畜の羊なら毛も取れように、せいぜいが翌年の堆肥の一助。最後まで生きようと足掻くひつじ達の、頭上を寒風が撫でていく。向かいでは先駆けて耕運機の音。丁寧な家は、雪の先に株ごと掘り起し、切り刻んで土に還してしまう。
許可を得て、枯れの進んだところを分けてもらった。細く縄に綯い、部屋へ置くしめ飾りを作るのだ。
余計なお節介だと言わんばかり、かさかさ鳴く細い葉が、握っていると心なしか温かい。
冬将軍の行進が、もうじき麓へ降りて来る。
その他
公開:19/12/05 22:26
更新:19/12/05 22:31
稲孫(ひつじ)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

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