詳細は秘密

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 テーブルには「鳥釜飯とフキの和え物セット」が二膳と、ソイラテが一杯置いてある。
 ソイラテを注文した主はすでにいない。
「なんて人なの!」という棄て台詞を残し、今しがた席を立ったところだ。
 無論、店員はそんなことを気にしない。一人減ったからといって「お一人分はキャンセルいたしますね」などとも言わない。それでいいのだ。
 その女性とは初対面だった。お膳立てをしたのは互いの上司なので、これは「お見合い」だった。僕も彼女も、上司命令でこのレストランへ来ていたのである。
 彼女は開口一番「私、物欲は殆どないんです」と言っちゃう女性だった。僕はそういう女性を、不快な思いをさせることなく、激昂させるのが大好きだ。
 今日は、上司同士がぎくしゃくしないよう配慮しつつ、彼女を誹謗中傷することなく激昂させ、会社の金でランチを二人前食べた上、生まれて初めて「ソイラテ」を飲むこともできた。
 大成功である。
その他
公開:19/12/07 17:06

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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