神頼み

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 正月三が日を終え、私は遅まきながら初詣へ出掛けた。
 夕刻の湯島天神は人影も疎らで、早々に本殿へ参拝し、帰路に就くことにした。
 流石に学問の神様が祀られているだけあり、絵馬掛けには大量の合格祈願の絵馬が掲げられていた。その絵馬を一人の老爺が一枚一枚検分していた。老爺は「こりゃ駄目だ」とか「こいつは良い」などと絵馬を吟味していた。
「何をしているのですか」
 と問うと
「今年の受験生の合否を確かめているところだ」
 と言う。その菅原と名乗る老爺が言うには、絵馬に書かれた文言や字体を見れば、その学生がどれほど勉強に対して真摯に取り組んでいたか分かるのだという。はては顔人相まで判るというのだ。老爺が言うには年々神頼みに縋る者が多すぎてけしからん、とのことだ。
「菅原さんは占い師ですか」
「ははは、違うよ」
 老爺は矍鑠たる足取りで本殿へ真っ直ぐ歩いて行き、本殿の前まで来ると不意に消え去った。
ファンタジー
公開:19/12/07 15:51

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