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目を覚ますと四角い箱のなかだった。
横たわる私の目前には長方形の窓があった。花の香りが鼻をついた。
すぐに悟った。私は死んだのだ。ここは棺桶の中だ。外から坊主の読経が聞こえる。
自分の死を受け入れる覚悟はできていた。大往生だ。会社を立ち上げて一代で大きくした。ありがたいことに財も成し家庭もすこぶる円満だった。とうとうお迎えが来たのだ。ただ満足だ。妻や子、孫らの顔を思い浮かべた。今も近くにいるだろう。誰かの啜り泣く声が聞こえる。
ふと姿勢を変えたくなった。とにかく箱が硬い。硬い?
となると、もしこのまま燃やされたなら非常に熱いのではないか。板の硬さも苦になるくらいなのだ。というよりもしかして私はまだ生きているのではないだろうか。馬鹿らしい。死ぬ覚悟を這い出る決心に切り替えて、蓋をばんと跳ねのけた。
坊主の驚く顔が見えた。参列者たちの驚く顔が見えた。
そのなかに知った顔はひとつもなかった。
横たわる私の目前には長方形の窓があった。花の香りが鼻をついた。
すぐに悟った。私は死んだのだ。ここは棺桶の中だ。外から坊主の読経が聞こえる。
自分の死を受け入れる覚悟はできていた。大往生だ。会社を立ち上げて一代で大きくした。ありがたいことに財も成し家庭もすこぶる円満だった。とうとうお迎えが来たのだ。ただ満足だ。妻や子、孫らの顔を思い浮かべた。今も近くにいるだろう。誰かの啜り泣く声が聞こえる。
ふと姿勢を変えたくなった。とにかく箱が硬い。硬い?
となると、もしこのまま燃やされたなら非常に熱いのではないか。板の硬さも苦になるくらいなのだ。というよりもしかして私はまだ生きているのではないだろうか。馬鹿らしい。死ぬ覚悟を這い出る決心に切り替えて、蓋をばんと跳ねのけた。
坊主の驚く顔が見えた。参列者たちの驚く顔が見えた。
そのなかに知った顔はひとつもなかった。
公開:19/12/07 09:57
更新:19/12/08 18:43
更新:19/12/08 18:43
たまに書きます。
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