先送り部長

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倉田が遅れて忘年会に行くと、先送り部長への不満で盛り上がっていた。

「あんだけ時間かけた企画案なのによお。やっぱり結論は来年にしよう、だってさ。倉田さん!部長って昔からああなんすか?」

そもそも部長を先送りなどと揶揄し始めたのは、倉田だった。何にも決断しないくせに自然と良い流れに乗っかる運の良さが、妬ましかった。でも…。

「ま、その慎重さのおかげで今の会社があるのも事実でさ。忘年会なんだから、言うだけ言って忘れちゃえよ」
「倉田さん、人が良すぎっすよ」

自分でもそう思ってた。人が良いから自分より他人を優先してきたんだって。違う!言い訳なんだよ。さっき気付かされた、あの部長に。

「帰る前に引き止めて悪いな。倉田の企画案さ、俺は買ってるんだ。年明けまでに、もう一度、本気で練ってこい」

部長はニタッと笑い、そして、こう続けた。

「もうこれ以上、先送りできんぞ。お前も俺も、な」
その他
公開:19/12/06 22:49

糸太

400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。

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