二杯目

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深い溜め息をついた。
マスターは僕のそれを合図に、珈琲をもう一杯注いだ。
テーブルの隅で埃を被っていた、星座占いにコインを落とした。

『強引は危険』

活字にすら僕は忠告される。
ふと窓を見ると、駅前で誰かを待つ黒髪の美しい女学生が映った。

鞄から封筒を手に取る。シネマのチケットが勿論、二枚と彼女の写真。その目は嘘をつかない筈だ。

「これは強引なのかなあ。」

二杯目に口をつけた。
強引じゃない筈だ。僕は二杯で諦めるから。

慣れた珈琲の味と、見慣れた文字を読み返す。二杯目が永遠に思えた。しかし僕の根気負け。僕は強引じゃあない。

『次に会える日が楽しみです』

一文を、皺ひとつない封筒に入れた。
この喫茶店に来る理由。入口の傍にポストがあってくれるからだ。
僕が店を出ると、まだ女学生は嬉しそうな顔で首を長くしていた。

「あの子は会えるといいなあ。」
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公開:19/12/04 21:58
更新:19/12/05 17:37
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智琉誠。

太宰治先生と三島由紀夫先生で義務教育を終えました。売れない作家をやっています。

日常を切り取った短編を書くのが好きです。
若輩者ですが、ノスタルジックな作品が書けるようになりたいです。宜しくお願い致します。

連載はこちらから
https://m.magnet-novels.com/my/novels

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