シャッターの男

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 明朝お披露目のシャッター絵画を手直ししたくて、俺は深夜の商店街に来た。そこに人影を見つけた。中年の男だ。
「こんばんは?」
 車中から声をかけた。すると男は俺を見るなり「画家の嶋さんではありませんか?」と言って微笑んだ。
「私は全国の商店街を旅しておりまして、先生のブログも毎日チェックしております」
 悪い奴ではなさそうだ。だが、なぜこんな時間に? と尋ねると、男は嬉々として話し始めた。
「シャッターが好きで。とりわけ、施錠したシャッターが床から2センチ程浮いているのを、この地下足袋のつま先でガッシャッと、こう閉め切る時の、えもいわれぬ感触がたまらんのです。こんなことは、人目につけば怪しまれますし、何よりも、夜のしじまの中ならではの反響音。これがまた格別でしてね。とくに雨上がりの星月夜なんかだと、これは、もう詩です」
 では失礼。
 俺は夜空を仰いだ。ガッシャッという音が、星を揺らした。
その他
公開:19/12/04 09:56
シリーズ「の男」

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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