泣きたい夜は

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泣きたい夜だった。
私は海へ車を走らせた。道路に規則正しく並ぶ街灯が私を手招きする。
車の窓を少し開けると、冷たい風で頭が冴えてきた。潮の香りが鼻を刺激する。
到着すると直ぐに靴を脱いだ。
砂浜を駆け抜け服のまま海の中へ。
海の冷たさは肌に刺さるようだった。
しかし、沖へ行くにつれて少しだけあたたかくなった。
体を海にゆだね、大の字になってぷかぷかと浮かぶ。
満月の光が眩しかった。目を瞑り波の音に耳を済ませた。
結婚生活がこんなに辛いなんて思わなかった。でも今日で終わりだ。
彼は私の親友を選んだ。
私は鈍く光る金の指輪を薬指から外して海の中に放した。指輪は魚になって泳いでいった。

もうそろそろ。

泣きたい夜は、こうして夜の海に抱かれにくる。
口の中に海水がはいりしょっぱい。
涙が溢れ出した。頬を伝い海となる。

気が済むまで泣いて、岸へ戻った。
軽くなった左手で海にさよならを言った。
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公開:19/12/04 01:55
更新:19/12/04 01:56

夜野 るこ

  夜野 るこ と申します。
(よるの)

皆さんの心に残るようなお話を書くことが目標です。よろしくお願いします。

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